MRIの一種で、短時間でできて体にも負担の少ない画像診断法

DWIBS(ドゥイブス)法は「MRI」を用いた全身のがん検査法の一つです。
PET検査と似ていますが、全く異なる検査法です。
DWIBS:Diffusion-weighted Whole body Imaging with Background Suppression(背景抑制広範囲拡散強調画像)の略称で、2004年に日本人の医師により開発された検査法です。近年、導入する施設が増えています。
もくじ
1. DWIBS(ドゥイブス)法とは2. DWIBS(ドゥイブス)法のメリット・デメリット
3. DWIBS(ドゥイブス)法の禁忌
4. DWIBS、PET検査、CT検査の違い
5. DWIBS(ドゥイブス)法はこんな方におすすめ
DWIBS(ドゥイブス)法とは
DWIBS(ドゥイブス)法では、人体の大半を占める「水分」の主要成分である水素原子核を磁気共鳴映像化することで、患部の正確な診断と転移の進行状態を調べることができます。
そのため、体内で水分量が比較的多い、脳や血管などの検査にも向いているとされています。
CT検査(コンピュータ断層撮影)やPET検査(陽電子放射断層撮影)と似ている部分がありますが、X線や放射線を全く使用せず、磁場を利用して高周波を人体に送ることで撮影をします。そのため、放射線による被ばくもなく、術後に放射性物質が残ることもありません。
DWIBS(ドゥイブス)法は、他の検査と比べて絶食や検査薬の注射がなく、待機時間が短いため、簡単で負担の少ない検査法として注目されています。
DWIBS(ドゥイブス)法のメリット・デメリット
PETやCTなどと比較されることが多いDWIBS(ドゥイブス)法ですが、それぞれ利点や注意点があります。
DWIBS法のメリット
○検査時間が短い、待機時間が不要
検査前後の準備や待機時間がなく、すぐに検査を始められます。検査時間はおおよそ30分ほどです。
検査薬を体全体に行き渡らせる時間も不要です。
○放射性試薬や注射が不要
体内の水分を見るため、PET検査のように体内に放射性試薬を注射する必要がありません。
○検査前の食事制限が不要
糖の消費など細胞の動きを見る必要がないので、検査前に空腹・低血糖にしておく必要がありません。
○放射線を使用しないため被ばくの恐れがない
体内に放射性物質が残ることもないので、検査直後でもすぐに幼児や妊婦に接触することができます。
○糖尿病・腎不全の方も検査可能
PET検査では、高い血糖値や糖代謝異常の方は、、検査前5時間の絶食、血糖降下剤やインスリン注射の禁止などが負担となり、検査をおすすめできない場合があります。
またCT検査では、喘息や腎臓病の方は、造影剤を注入できず、検査を受けられない場合があります。
しかしMRIを使用したDWIBS(ドゥイブス)であれば、糖尿病・腎不全の方も負担なく検査を受けられます。
○豊胸バックの方も検査可能
乳腺にシリコンバッグを挿入している方など、通常のマンモグラフィ検査が受けられない方にも適用できます。
○軟部組織や神経系の撮影に優れている
CT検査やPET検査では判別しにくい、筋肉、靭帯、脳神経系、腫瘍などの軟部組織や神経系の撮影に適しています。微妙な違いを再現し、精細な画像を撮影することができます。また急性脳梗塞の疑いがある場合は、MRIで短期間の検査が可能です。
○服を着たまま検査ができる
体を見られることなく全身の内部が撮影できるので、精神的にも負担になりません。
DWIBS法のデメリット
○細胞の密集度が低いがんは発見しにくい
肺や心臓の周囲など、細胞密度の低いがんは見つけにくいという弱点があります。
DWIBS(ドゥイブス)法の禁忌
MRIを利用した検査なので、MRIの禁忌事項(受けられない条件)がそのままDWIBSにも当てはまります。
下記の方はDWIBSの受診をお控えください
○体内に金属プレートや電子機器を装着されている方
人工ペースメーカーなどの磁気が金属に反応し、画像にノイズが発生する可能性があります。
○閉所恐怖症の方や狭いところが苦手な方
ドーナツ状のトンネルのような機械の中で3~40分間ほど検査が行われます。
○極端に体格の大きい方
MRI装置に入れない場合は受診ができません。
○タトゥー(刺青)がある方
色素に金属成分が含まれている場合は、画像にノイズが発生する可能性があります。
○大きな音が苦手な方
MRI検査中は、断続的に大きな音が鳴り続けます。
○妊婦、または妊娠の可能性のある方
念のため緊急性のない検査は控えるようにしましょう。
DWIBS、PET検査、CT検査の違い

いずれも体内をスライス上に撮影し、がんの検査ができますが、以下のような違いがあります。
DWIBS(MRI)法 | PET検査 | CT検査 | |
---|---|---|---|
原理 | 水分 体内にある水の分子の拡散を利用し磁気共鳴により映像化(磁場) |
放射線 ブドウ糖に近い成分の放射性試薬(FDG)を体内に注射し、PETカメラで全身のFDGの分布を撮影 |
エックス線 レントゲンと同じエックス線を使用して身体の断面を撮影 |
得意分野 | 脳、神経、血管など水分の多い部位 | リンパ腫、がんの悪性度の判別、アルツハイマー病など | 動いている臓器、細かい部位 |
食事制限 | なし | あり 検査5時間以上前から絶食 |
あり 部位によって異なるが、検査3時間以上前から絶食 |
注射 | なし | あり 造影剤を静脈から注射 |
あり 造影剤を静脈から注射 |
被ばく | なし | あり 1回:約2.2mSv |
あり 1回:約7.0 mSv |
検査時間 | 約30分 | 約3時間(注射含む) | 約10~15分 |
検査後の注意点 | なし | あり 体内の放射性物質を排出するまで待機・検査後、体内の放射性物質が半減するまで半日ほど、造影剤が体外に排出されるまで1日かかる |
あり 造影剤を体外に出すため十分な水分を取る |
※診療内容はクリニックによって異なります。詳細は直接お問合せください。
DWIBS(ドゥイブス)法はこんな方におすすめ
- ・特定部位だけではなく全身のがんリスクを検査したい方
- ・日々忙しく、食事制限等が難しい方
- ・検査時間はできるだけ少なくしたい方
- ・糖尿病のため、PET検査が受けられない方
- ・被ばくの恐れなく検査を受けたい方
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