PET・PET-CT検査の流れ
一般的なPET(ペット)、PET-CT(ペットシーティー)を含む検査で共通の項目である「検査前の絶食や運動制限」「検査当日の流れ」「帰宅後の注意点」について解説します。
※実際の順序や内容は、検査機関やコースによって異なります。本ページ内では、PET-CTも含めてPETと記載しています。
もくじ
<PET検査前>事前予約 / 問診票の記入 /
安静に過ごす / 検体の採取 /
絶食 / 持ち物 / 来院 /
延期やキャンセルについて
<PET検査>
1.受付・着替え・準備
2.問診・診察・血糖値検査・他検査
3.PET検査薬(FDG)の注射(5~10分間)
4.安静タイム(約60分)
5.PET撮影(1回 約20~30分)×1~2回
6.PET検査後の待機(0~60分)
<PET検査後>
・帰宅後の注意点
・検査結果の送付
PET検査の流れについて(検査前)
事前予約からPET検診当日までの過ごし方、提出物・持ち物・注意点について解説します。
PET検査を含むがん総合検診、あるいは健康診断・人間ドック、またはPET検査単体の申し込みをします。
- 持病や服薬のある方はご相談を
糖尿病などの持病がある方は主治医にPET受診の可否を相談しておきましょう。またPET検査施設の予約時にも、持病や常備薬についてお伝えください。
- 1週間以上先の日を選ぶ
コースによっても異なりますが、およそ1週間以上先の日付を予約しましょう。
- 女性は生理周期にご注意
閉経前の女性は生理周期にも留意してPET検査日を決定してください。一般的にPET検査は生理後から排卵前に受けるのがベストとされています。これ以外の時期にも受診が可能ですが、診断できる範囲が制限されてしまいますので予めご確認ください。またお子さまはPET検査に同伴できないため、託児や授乳中断などもあわせてご検討ください。
>>詳しくは「女性がPET検査を受ける場合」 - 診療情報提供書(紹介状)がある場合
すでにがん治療中や経過観察中の方は、通常のがん検診や健康診断とは別のコースになります。主治医に診療情報提供書(紹介状)に用意してもらい、予約の時点で伝えておきましょう。健康保険が適用されますのでご確認ください。
>>詳しくは「健康保険の適用について」 - 検査内容とコース名をチェック
オプションによって費用や検査内容が異なります。類似したコース名でも検査する範囲やPET検査機器が異なる場合があります。PET-CTやPET-MRI、乳房専用PETなど、希望がある場合は予めチェックしておきましょう。
PET検査ネットでは「PET-CT」の設備がある検査施設を検索できます
前日までの過ごし方
激しい運動を避けて過ごし、決められた時間以降は絶食します。
- 1週間前からX線検査を控える
PET検査予定日の 1 週間前から、バリウム検査およびレントゲンなどのカメラ検査(シンチグラフィー・SPECTなど)は控えます。もしやむを得ず他の医療機関でX線検査を受けた場合は、PET検査当日に申告しましょう。検査コースによってはPET検査と前後してX線検査が組み込まれていることがありますが、その場合は問題ありません。
- PET前日は運動を控える
PET検査前日から検査終了までは運動、重労働、カラオケなどは控えて、安静にお過ごしください。 (ジョギング、水泳、サイクリング、ゴルフ、テニスなど) 筋肉痛などがあると薬が筋肉に集積してしまい、正しい診断の妨げになります。のどの炎症もPET検査に悪影響があるのでカラオケや大声など、のどの酷使も控えましょう。 寝不足も避けた方がよいので、検査前夜はしっかり眠っておくことも大切です。
検査当日
絶食を守り、遅れないように来院します。
- 当日は水分以外を摂らない
水やお茶は飲んでも構いませんが、糖分を含むジュースやスポーツ飲料、牛乳などの脂質を含むもの、アルコール類は禁止です。シュガーレスのガム、飴も食べられません。
- インスリンや内服薬も制限
糖尿病の方は、主治医の指示のもと、インスリンや内服薬(血糖降下剤)を絶食時間中に服用しないでください。 - 喫煙も極力控えましょう
のどや呼吸器に影響が出る可能性があるため、喫煙も極力控えておきましょう。 - サプリメント類にもご注意
PETには直接影響しませんが、生化学検査(尿や血液の検査)に影響が出やすい、ビタミン剤や風邪薬、栄養ドリンクなども控えておきましょう。 - 検査が午後スタートの場合
ただしPET検査が午後からスタートする場合は、検査当日の朝以降の絶食となります。指示された時間を守るようにしましょう。
- 問診表・同意書など
当日の検温、体調など指定された項目に記載します。 - 採取済みの検査キット(検体)
もし採取できなかった場合は受付時に申告してください。 - 健康保険証
不要な場合もありますが、念のため持参しましょう。 - 水分補給用の水またはお茶
絶食しているため脱水症状にならないようにこまめに飲みます。さらに検査後は薬剤を尿として体外に排出させるためにも役立ちます。 - 検査費用
クレジットカード決済の場合は、現金不要。ただし保険適用の場合は一般的にカード決済不可のケースが多いようです。
- PET検査中に羽織るもの(金属のついていないもの)
待機室や検査室が冷える場合があるため、ご用意ください。 - 【私服で検査を受ける場合】お好みでトレーナーやスウェットパンツなど
検査中に着替えたい場合はご用意ください。 - お薬手帳(持病がある方)
- 常用薬(検査当日の分は飲まずに持参し、検査後に服用します)
- 主治医からの紹介状や データCDなど(あれば)
- ウイッグの代わりの金属類のない帽子(ウイッグをご利用の方)
- ストーマパウチ・尿漏れパッド・おむつなどの替え(必要な方)
- 低血糖発作用のブドウ糖(糖尿病の方・事前に要相談)
- ペースメーカー、ペースメーカー手帳
(植え込み型除細動器(ICD)を使用されている方など)
より精度の高い検査・診断ができるように、当日の肉体労働は避け、体を冷やさないようにして検査施設に向かいます。
- 冷えない服装で
1年を通じて、なるべく冷気を避けて暖かい(冷えない)服装で来院します。身体が冷えると熱を生み出す褐色脂肪細胞に薬が反応してしまうことがあり、正しい診断の妨げになります。夏季の冷房にもご注意ください。 - 筋肉に負担のない交通手段で
当日の肉体労働は避け、筋肉に負担の少ない交通手段で来院します。
例えば長距離の歩きや、自転車での来院は避けましょう。来院には自家用車もしくは公共機関(電車、バス、タクシーなど)をご利用ください。
なお、帰宅時はこの限りではありません。 - 来院時間を厳守
検査薬(FDGなど)を予約時間ぴったりに合わせて作りたてを用意するため、遅刻した場合は検査できない可能性があります。余裕をもって到着できるようにしておきましょう。 - 介助をする方の同伴
一人での移動や着替えが困難な方は、ご家族や介助者の付き添いが必要となります。お手数ですがご一緒にご来院ください。もしPET撮影時にも介助・同伴する場合はごく微量の被ばくを受けますが、健康には影響のない範囲とされているのでご安心ください。
消費期限の短い、高額な検査薬を用意するため、受診者都合による当日キャンセルは、検査を受けなくても料金の支払いが必要になる場合もあります。ご注意ください。
- 前日までに連絡を
行けないことが判明したらすぐに、できれば前日の受付時間中には、検査機関に連絡しましょう。当日に行けなくなった場合も、必ず早めに連絡を入れるようにしましょう。 - 遅刻すると検査ができません
検査薬の消費期限が2時間と短いため、検査時間をずらすことができません。余裕をもって到着できるようにしましょう。 - キャンセル料について
当日のキャンセルや無断キャンセルの場合は、受診者が検査料を負担しなければいけない可能性があります。検査用の薬剤(FDGなど)は、一人ひとりに合わせて用意しているため、ほかの人に使いまわすことはできません。
PET検査の流れについて(検査)
検査施設に到着したらいよいよ検査がスタートします。
- 1. 受付
検査スタート時間の10~30分前に受付を済ませます。(検査機関によって異なります。指定時間をお守りください) - 2. 着替え
ロッカールームで、検査着に着替えます。貴金属類(時計・ヘアピン・アクセサリー・入れ歯・補聴器・コルセット、金具付きのウイッグ等)はすべて外して、ロッカーに入れて鍵をかけます。下着類も金属のないものをご用意ください。
私服で検査を受けられる場合は、着替えは不要ですが、ベルトや腕時計など大きな金属ははずします。お好みで持参したスウェットなどに着替えることもできます。
(MRIを受ける場合は、特に金属が禁忌となりますので、カラーコンタクトレンズも外してください。アイメイク(化粧品)に金属を含む場合もあるのでご注意ください。) - 3. オムツ、尿パッド、ストーマなどを使用中の方は替えの準備
検査前に新しいものに交換しておきましょう。もしもに備えて多めにご用意されると安心です。
- 1.問診・診察
検査前の問診を行います。気になることや炎症を起こしている部位などがありましたら申告しましょう。
※問診や診察はPET検査後に実施する場合もあります。 - 2. 血糖値測定(+採血検査)
血糖値の検査を先に行います。血糖値が高すぎる場合(血糖値およそ150以上)は検査中止となる場合がありますのでご注意ください。 - 3. 他の検査
同日に採血・採尿がある場合は、必ずPET検査前に採取をします。PET検査の後ではできませんのでご注意ください。
がん検診のスタンダードなコースには、PET以外に、身体測定、MRIやCT、エコー、採血などの検査が含まれていることが多く、その場合、FDG注入前にほかの検査を行うことが多いようです。 - 前処置(断食・運動制限)を守らないと中断または検査時間が延びることも
前日~当日までの指示を守れなかったり、PET当日の血糖値が高過ぎたりする方は、PET診断の精度が落ちるリスクがあります。その場合は、PET検査を中止したり、PET検査の順番が後に変更になることもあります。
逆に低血糖となってしまった場合も、PET検査は中止になりますので、糖尿病の方はあらかじめ主治医とよくご相談ください。
受診者自身の責任で中断となった場合は、薬剤の代金(数万円)の支払い義務などが生じる可能性がありますのでご注意ください。
- 注入時の感覚
放射性検査薬(FDG、MET、FLTなど)を静脈から注入します。所要時間は5~10分程度です。
この時、何も感じないという方が多いのですが、まれに体内が熱くなったように感じる方もいます。しかしこの感覚は正常な反応ですのでご安心ください。(時間の経過とともに半減し、尿などで排出されて違和感がなくなっていきます) - 薬剤のバリエーション
なお、一般的ながん検査用のFDG-PET(ブドウ糖)のほかに、脳腫瘍を検査する場合はMET-PET(アミノ酸)、神経膠腫(グリオーマ)にはFLT-PET (フルオロチミジン)、脳組織の壊死を調べるにはFMISO-PET (フルオロミソニダゾール)など、目的に応じて異なる検査薬を注入することもありますが、検査の流れはおおよそ同じです。
また「脳梗塞・動脈硬化」などのコースでは、気体(一酸化炭素、酸素、二酸化炭素)の薬剤を口から吸入することもあります(ガスPETなど)。
- 待機室にて
待機室内のベッドで横になって、安静に過ごし、検査薬が体内全体にいきわたるまで待ちます。その際、配布されるブランケット(毛布など)をかけて身体を冷やさないようにしましょう。 - 水分補給(500ml 程度)
待機時に水分補給用のペットボトルを渡されることが多いようですが、できるだけ500ml全部を飲み切るようにしましょう。しっかり水分補給して尿を出すことで、血液中に残存する検査薬の排泄を促進でき、膀胱へのFDG集積を排除して、診断しやすい画像を得られるようになるとされています。 - 読書やスマホは控える
検査待機中は、読書やスマートフォン操作、ゲーム、電話は控えてください。
読書やスマホ・タブレット・ゲーム操作は脳を、会話はあごやのどを使うため、FDGなどの検査薬が集積して本来の病変が判別しにくくなるからです。 - 待機終了時に排尿
待機時間が終了したら、検査直前にトイレで排尿し、膀胱にたまった放射性検査薬を排泄します。
- 1回目のPET撮影
検査薬注射のおよそ1~2時間後に、PETカメラ装置で全身を撮影します。
横たわった状態で静止していると、検査台(ベッド)が動いて、リング状のガントリー内をゆっくりと通過しながら、スライド上に体内をPETカメラで撮影していきます。
そのまま何もせず、目を閉じて静かに寝ているだけで完了します。撮影用の光は目には見えないので、体には何も起こっていないように感じます。レントゲンと同様に痛みなどの感覚ももちろんありません。
しかし人によっては、機械音が気になる、検査室の室温が肌寒く感じる、暗い部屋や狭いガントリーを通るのが苦手、じっとしているのがつらい、など感覚的に気になる場合もあるようですが、検査の妨げになるほどのことは滅多にありません。 - 画像確認
撮影されたPET画像を技師が確認し、ブレなどが生じていないかチェックします。 - (必要に応じて)2回目のPET撮影
1回目の撮影終了後に、必要に応じて、2回目の追加撮影が発生する場合があります。 1度撮影した画像を確認し、画像にブレや疑わしい部位があった場合に、30分~2時間後にもう一度撮り直しをします。
このため、追加撮影の有無の案内は、1度目の撮影が終了した後になります。
※近年は、時間を空けて2回撮影することで、検査薬の集積の変化がはっきりわかって病変を見つけやすくなるとしている施設も多く、最初から2回撮影をするケースも増えています。 - オプション検査
乳がん専用PET(PEM、エルマンモなど)を受診する場合は、全身PETの後で行います。
PET検査の流れについて(検査後)
帰宅後にはいくつか注意点があります。また検査結果は基本的には郵送で受け取ります。
- 帰宅
帰宅方法には特に制限はありません。ただし、検査後半日はごく微量であっても放射性物質が体内から出ている状態なので、後述のように配慮が必要です。 - 排尿について
・PET検査後の尿には検査薬の成分である放射性物質が含まれています。尿の飛び散りを防ぐために検査後半日~1日程度は、男性の方も座って排尿するようにしましょう。またトイレの後はよく手を洗うよう心がけてください。 - 乳幼児との接触
・検査後、半日間はご家族、特に10歳未満のお子さまに長時間接触することは避けましょう。長時間の抱っこ、おんぶ、添い寝など。
接触を控える時間は検査後3~6時間、できれば12時間ほど空けることが望ましいとされています。
・授乳期の女性の場合、PET検査後 24 時間は授乳を中止しましょう。授乳再開の直前に一度搾乳・廃棄してから、通常の授乳を再開するようにしましょう。 - 水分補給
・なるべく多めに水分をとって排尿を促し、体内に残留する検査薬を排出しましょう。
- PET検査結果
PETを含む全検査結果は郵送で届きます。もし疑問があれば、結果の説明を受けることもできます。ただし対面で医師から説明を受ける際は別料金がかかる場合もありますのでご確認ください。 - 異常が見つかったら
・がんなどの病変が見つかった場合は、治療に特化した医療機関を紹介してもらうことができます。また治療に必要な検査情報や画像データを医療機関に共有し、できるだけスピーディに治療を始められるようサポートされますので、ご安心ください。
定期的に検診を
がんは40代を過ぎると発生率が高くなってくるとされていますが、もちろん個人差があります。PETやPET-CTは肉体的な負担をかけずに全身を調べることができるうえ、細胞の性質を見る「機能診断」が可能な珍しい検査方法です。他の検査と組み合わせることで、多面的にがんや重大疾病を早期発見するためのツールとして活用できます。
「通常の健康診断では見落としてしまうような小さながんも、しっかり調べておきたい」という方の中には、「レントゲンや超音波、血液検査などの総合検診は毎年。PET-CTによる検診は1~2年に一度、内視鏡検査と交互に受診」などリズムを決めて、定期的に受けていらっしゃる方も多いようです。毎年のお誕生日や記念日などを区切りにして、PET検診がご自身の健康を見つめなおす貴重な機会になるといいですね。