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PET検査の種類と最新情報(がん検査と基礎知識)

PET検査の最新情報と種類

PET検査の最新情報

1994年に日本でスタートしたPET検査ですが、年々進化を続け、より精度の高い検査、幅広い病変の調査が可能になりました。 PET単体だけでなくCTやMRIと融合した検査が一般的になり、撮影時間の短縮、乳がん専用PETの実用化、脳や心疾患など動脈のPET診断も可能になっています。

PET検査の最新情報

PET/CTが主流に

近年はPET単体よりも精度の高いPET/CTが普及しており、「PET検査」という名称であっても「PET/CTによる検査」を示す場合が増えてきました。

PET-CTの画像イメージ
PET-CT

PET/CTなら、体内を連続で輪切りにしたようなスライス画像を撮影して、立体的に体内の様子や病変の位置を把握することができます。

PET/MRIの登場

PET/CTの登場から10年後。PETとMRIを組み合わせたPET/MRI(ペットエムアールアイ)が登場しました。

PET-MRIの画像イメージ
PET-MRI

PETによる機能画像とMRIによる形態画像を融合させる点で、PET/CTと似ていますが、CTよりもより精緻な断層映像を得ることができるといわれています。

PET/MRIの登場の方が遅れた理由は、PETの装置がMRIの強い磁場の影響を受けやすかったため、磁場の影響を受けない装置を開発するのに時間がかかったからです。

先発のPET/CTでは、CTとPETの検出装置(ドーナツ状の部分)が並列してついていることが多いのに対し、後発のPET/MRIはMRIのガントリー(磁場検出装置)の内部にPETも組み込まれていて、同時に撮影ができるので、受診者の負担も軽く、撮影画像のズレが起こりにくいなど、メリットが多くあります。

ただしPET/CTと比較すると、検査時間が長い、大きな音が出る、磁気を利用しているのでペースメーカーを入れている方は利用できない、などMRIと同等の注意事項があります。

呼吸の自動補正(呼吸同期)機能で画像のブレを抑制

肺や内臓のレントゲン撮影の瞬間に「息を止めて」と指示されたことがあると思いますが、実はPETやCT、MRIの撮影時にも同様に受診者の呼吸の動きが妨げになります。
とはいえPETやCT、MRI場合は全身の撮影に何十分も時間がかかるため、レントゲンのようにずっと息を止め続けることはできません。
そこで、最近はPET検査機器に「人間の呼吸による動き(体動)を自動的に補正する機能」が搭載され、より精度の高い撮影ができるようになりました。この補正機能そのものも年々進化し、より正確になっています。

呼吸の自動補正
撮影中の呼吸を自動的に補正して、画像のブレを抑えます

例えば肺がんの場合、呼吸のたびに肺のサイズが変わるため、がんの病変も実際より大きく膨らんで撮影されてしまうという問題がありました。しかし呼吸補正が加わると、止まっている時と同じように撮影ができるので実際のサイズに近い状態で病変を確認することができます。
ほかにも体動が原因で起こる、病変などの位置の誤認識や画像のボケ、空間分解能の劣化が改善されます。これらはPET検査で正確な診断を妨げる原因の半分を占めているとされているので、補正されることでPET診断の信頼度がより高くなります。

なお補正機能がない場合は、受診者はマーカーを体の表面(お腹や胸など)に装着し、静かに呼吸を続けるよう指示される場合があります。検査中にマーカーの動きを記録し、呼吸センサーで体動を考慮しながら画像を診断しています。

検査時間がもっと短く

撮影に20~30分かかるPET検査。しかしながら年々進化する装置により、検査時間が短縮されています。そんな中、2019年アメリカでは最短20秒で全身を画像化できるPETスキャナーが開発されました。まだ実用化されていませんが、高速で撮影ができるようになれば、ブレのない精緻な画像が得られて、診断の精度も上がります。そしてもっとたくさんの人が気軽に検査を受けられるようになります。
さらに今後は、高速の撮影により、数分おきに撮影すればリアルタイムで薬剤を追跡したり、細菌感染の特定にも利用できると期待されているそうです。

遠隔手術などのオンライン診療にも

オンライン診療
遠く離れた大病院の医師が診察する「オンライン診療」

「5G(ファイブジー、第5世代移動通信システム)」により高速で大容量のデータを通信できるようになったことで、医療は目覚ましく進化しています。遠隔手術や遠隔診療(オンライン診療)が実現、実用化され、大都市から離れた場所でも、大病院と同じ治療を受けられるようになっていくことでしょう。
そんな遠隔診療では、PETやMRIなどの精細な検査データは重要な意味を持ちます。患者さんの体内の様子を遠くのクリニックで医師がリアルタイムで確認し、遠隔手術や治療に活用していくのです。

PET検査の種類(バリエーション)

細部に特化した検査や最新技術により、より早期のがんや、幅広い疾患を検出することが可能になってきました。新しい機器と技術、検査のバリエーションをご紹介します。

進化したPET検査のバリエーション

乳房専用PET

乳房専用のPET検査装置です。
通常のPET検査と比較してずっと小さな乳がんを検出できるため、早期発見に有用とされています。
リング型と対面型の2タイプがあります。


乳がん専用PET PEM乳がん専用PET

脳PET(脳機能PET検査)

脳は全体的にブドウ糖の代謝が大きいため、PET検査ではがん診断が難しいと言われていた部位です。しかし現在は、ブドウ糖以外の物質を検査に用いることで、腫瘍の性質を多面的に調べたり、脳腫瘍以外の疾患を検査することができるようになりました。

脳PET

FDG-PET (ブドウ糖)

ブドウ糖のエネルギー代謝量を調べることで、脳組織が活発に活動しているか部位や程度を見ることができ、アルツハイマー型認知症の診断に役立ちます。

MET-PET (アミノ酸)

必須アミノ酸であるメチオニンの代謝を調べることで、脳腫瘍の増殖能力や血管新生能力を判断する指標となります。メチオニンが集積している場所では早いペースで細胞が増えていく可能性があります。

FLT-PET (フルオロチミジン)

細胞分裂に関わるフルオロチミジンを使うことで、脳腫瘍のDNA合成能力の指標となります。神経膠腫(グリオーマ)などの悪性度を調べるのに有用です。

FMISO-PET (フルオロミソニダゾール)

腫瘍内の低酸素領域を調べることで脳組織の壊死が起こっている場所を特定します。

ガスPET (一酸化炭素、酸素、二酸化炭素)

脳の血流量、酸素消費量を調べることで、脳血管障害や血流量の異常を検知します。脳梗塞や動脈硬化のリスクを調べることができます。

上記以外にも、脳PETでは、多種の臨床用PET薬剤を用いることで、ブドウ糖以外に様々な物質に放射性の目印をつけて、がん疾患以外にも幅広く脳の検査ができるようになってきました。

脳PETで検査できること

  • がん(脳腫瘍)
  • 認知症(アルツハイマー型、レビー小体型、前頭前野型)
  • 神経疾患(パーキンソン病、てんかん)
  • 精神疾患(摂食障害、薬物依存)

心臓PET

心臓の動きや症状の診断に特化したPET検査です。
動脈硬化・狭心症・心筋梗塞のリスクを診断します。さらに冠動脈(心臓の血管)から心臓の筋肉へ流れる血流を調べることで、冠動脈の詰まり(冠動脈瘤)を検出することができます。
調べる対象によって、試薬を使い分けます。

FDG-PET (ブドウ糖)

エネルギー代謝を見ることで、心臓に発生する肉芽腫(心サルコイドーシス)の検出や、心筋が正常に活動しているかを診断します。
検査前に糖負荷を行ない、心筋がFDGを取り込みやすい状態にします。

また、心筋梗塞後の治療によって、心臓の収縮機能が戻る可能性がある心筋を見つける検査にも役立てられています。
心筋血流をみるSPECT検査と併用して行なうことで、より精度の高い診断が得られます。

アンモニア-PET

放射性のアンモニア薬剤を使って、心臓の血液の流れや動きを調べます。狭心症、心筋梗塞、心筋症などの病気の有無やリスク、もし重症度を診断します。

PET-CT

PETとCTの画像を同時に撮影することができる機器です。PET/CTなどとも表記されます。

PETの性質上、PET単独の結果のみでがんの有無や場所を断定することは難しいのですが、体内の細部まで写し取るCT画像と同時に撮影することで、疑わしい部位の形や場所などをよりはっきり把握することが可能になりました。
細胞の機能画像(PET)と形態画像(CT)をあわせることで、欠点をカバーしあいます。PET-CTと呼ばれる機器には、フュージョン(融合)技術(下記参照)が内蔵されています。

PET-CT

PET-CTフュージョン

PET-CTと原理は同じです。PETとCTやMRIの画像を重ね合わせることで、より信頼性の高い検査を行います。

「フュージョン(fusion=融合)」とは別々の画像を統合する技術のことで、内臓や首の位置のズレなども、コンピュータで自動的に補正し、完全に重なった一つの画像をつくります。この技術はPET-CT機器にも内臓されています。

ただ、「フュージョン」や「合成」は、基本的には別々の機器で撮影した画像を、後に専用のシステムで一つに統合するので、同時撮影する「PET-CT」と分けて呼ばれることもあります。

この検査方法の利点は、個々の検査機器を新しいものにバージョンアップできることです。最近では、16列型マルチスライスCTスキャナーなどの、内臓を細部までリアルに撮影できるCTと、PET画像を融合している検査機関もあります。

これからも進歩するPET検査技術

さまざまなメーカーが、より早く、適切にがんをみつけるために、PETそのものの精度をあげるための研究を続けています。 PET検査は今後、より精密で、誰もが受けやすいものになるのではないでしょうか。

とはいえ、万能の検査というものはありませんので、やはり複数の手段で多面的に検査を受けることをおすすめします。

上手にPET検査を利用して、末永く健康でありたいものですね。

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