PET以外のがん検査
がん発見には、複数の検査を組み合わせて確度UP
一度の撮影で全身のがんをチェックできるというPET検査ですが、より精度の高い診断を得るためには、ほかの検査方法を併用することが有効です。なぜなら、どんな検査方法であっても、100%の確率でがんを検出することはできないからです。
いずれの検査方法にも得意・不得意があり、それらを組み合わせたり、部位や場合によって使い分けることで、より多面的で精度の高い検査が可能になります。
特に早期がんは小さく、一つの検査だけでは検出できないことがあるので、見落としを防ぐためにも併用がおすすめです。
「がん検診」や「がんに特化した人間ドック」では、最初からタイプの異なる検査を組み合わせて弱点を補完したコースが用意されているので検討してみましょう。
もくじ
部位別・代表的ながん検査の種類一覧◆画像診断
◇ X線(レントゲン)
胸部X線 / 胃X線(バリウム検査) / 乳房X線(マンモグラフィ)
◇ 血管造影(CTA / MRA)
◇ シンチグラフィ
◇ PET / PET-CT / PET-MRI
◇ CT
◇ MRI / DWIBS
◇ 超音波(エコー)
◆内視鏡
胃カメラ / 大腸カメラ / カプセル内視鏡 / 腹腔鏡・胸腔鏡
◆生化学検査
血液検査 / 腫瘍マーカー / マイクロRNA / 病理診断(生検、細胞診) / 便検査 / 尿検査
◆ウイルス検査
ピロリ菌 / EBウイルス / 肝炎ウイルス / HPV / HTLV-1
◆生物診断 / 線虫がん検査
◆診察 視診 / 触診 / 問診
部位別・代表的ながん検査の種類一覧
「がん家系だからしっかり調べておきたい」「胃がんや肺がんは?PET以外にどんな検査を受ければいい?」という方に。気になる部位ごとに、検査方法を一覧でご紹介します。「詳細を見る」ボタンをクリックしてください。
調べる部位 | 代表的な検査方法 | PET |
---|---|---|
胃・食道・十二指腸 | 胃部X線(バリウム)・内視鏡・ウイルス検査・病理診断・CT・MRI・PET・腫瘍マーカー・注腸検査・腹腔鏡 | ★進行がんの病期・転移診断に有効 |
大腸・小腸・直腸・肛門 | 直腸診(触診)・注腸造影(バリウム)・大腸内視鏡・便潜血検査・大腸3D-CT・大腸X線・カプセル内視鏡・病理診断・PET・CT・MRI・腫瘍マーカー | ★進行がんの病期・転移診断に有効 |
肺 | 胸部X線・喀痰細胞診・針生検・気管支鏡・胸腔鏡検査・PET・CT・病理診断・腫瘍マーカー | ★★有効 |
肝臓・胆道・胆のう | 腹部超音波(エコー)・PET・CT・MRI・腫瘍マーカー・針生検(病理診断) | ★正常でも薄くFDG反応が出るが検出可能・再発診断に有効 |
すい臓 | 腹部超音波(エコー)・血液検査(血中膵酵素診断)・腫瘍マーカー・CT/造影CT(CTA)・MRI/造影MRI(MRA)・超音波内視鏡検査(EUS)・内視鏡的逆行性胆管膵管造影・病理診断 | ★進行がんの転移診断に有効 |
脳 | 脳血管造影検査・MRA・CTA・PET-CT・病理診断 | ★正常でもFDG反応があるため不向き・進行がんの転移診断に有効 |
血液・リンパ | 血液検査・腫瘍マーカー・骨髄検査・髄液検査・染色体検査・遺伝子検査・胸部X線検査・超音波・CT・PET | ★進行がんの転移診断に有効 |
口腔(舌・咽頭) | 視診・病理診断・超音波・CT・MRI | ★★★有効 |
乳房 | 超音波・マンモグラフィ・PET/乳房専用PET・CT・MRI | ★★★有効 |
子宮頚部・子宮内膜 | 超音波・ウイルス検査・細胞診 | ★★有効(生理周期による) |
前立腺 | PSA検査(腫瘍マーカー)・直腸内触診・経直腸的超音波(エコー)・前立腺MRI・針生検 | ★進行がんの転移診断に有効 |
腎臓 | 尿検査・針生検・CT・超音波(エコー)・MRI・骨シンチグラフィ | ★進行がんの転移診断に有効 |
膀胱 | 膀胱鏡(内視鏡)検査・尿細胞診(尿検査)・腹部超音波(エコー)・CT・MRI・病理診断(腫瘍切除) | ★膀胱にFDG反応が出るため不向き・進行がんの転移診断に有効 |
以下は、検査の種類ごとに解説します。
画像診断
特殊な装置で体内を撮影し、専門知識を持つ医師や診断士が病変を見つける検査方法をまとめて「画像診断」と呼びます。レントゲンやPET検査、CTなども含まれます。
X線(レントゲン)
X線とよばれる放射線を使って体内を撮影する方法です。近年はデジタルレントゲンが主流になり、精細な画像が得られるようになりました。
X線(レントゲン)のメリットは衣服を着たまま短時間で検査でき、苦痛もない点です。また検査費用も安く、ほぼすべての医療機関で受けられます。
一方デメリットとして、白黒の平面画像なので死角があり、偽陰性・偽陽性が生じやすいこと、病変の特定には二次検査が必要であることがあげられます。
X線(レントゲン)の詳しい解説ページ
血管造影
血管の状態や血液の流れを調べるための検査です。血管に造影剤を注入してからX線、またはCT、MRIなどで撮影して血液の流れや血管の状態を撮影します。心臓や脳をはじめ全身の血管を調べることができます。動脈からカテーテルと造影剤を入れて撮影し、検査と同時に血管内の治療を行うこともできます。
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シンチグラフィ
SPECT検査、シンチカメラともよばれます。PETと同じ核医学検査で、放射性試薬を投与してからガンマカメラで体内を撮影します。骨や血流を調べることに優れています。
X線やPETと同様に、ごく少量の被ばくがあります。造影剤より検査薬の量が少ないため、アレルギーのリスクがありません。
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PET検査
陽電子放射断層撮影法 Positron Emission Tomography
がん検査に特化した画像診断検査です。
放射線で目印をつけたブドウ糖を体内に投与してから、PETカメラで体内を撮影することで、異常にブドウ糖を消費する部位=がん細胞を発見します。
腫瘍の悪性度だけでなく、位置や大きさ、活動の状態を把握することができます。
CTやレントゲン、エコーなど他の画像診断は病変の「“形”を診る検査(形態診断)」であるのに対し、PETは細胞の活動という「“機能”を診る検査(機能診断)」であるという点が大きく異なります。
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CT検査
コンピュータ断層診断 Computed Tomography
X線を照射して臓器の形態的な異常を見つける検査法です。X線を360度全方向から照射することで、人体を輪切りにした画像を撮影でき、体内の断面が白黒写真のような画像となっていくつも写し出されます。
これにより立体的に体内の形を把握して、異常を発見することができます。薄く広がっているタイプのがんや、悪性度の低い高分化がんの発見にも適しています。
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MRI検査
磁気共鳴画像診断 Magnetic Resonance Imaging
強力な磁場と電波を利用して、体内を撮影する画像診断検査です。
放射線を使わないので、被ばくの心配もありません。
姿勢を変えることなく、体のいろいろな部分を縦、横、斜めなどあらゆる角度の断面像を得ることができ、病変の位置を把握するのに有効です。骨盤部や頭部の診断に優れており、がん検査以外ではMRAなど脳の検査にも利用されています。一方、胃や腸などの動く部位の検査にはあまり適していません。
強い磁気が体に当たるため、心臓ペースメーカー、金属の器具が体内にある方は検査できないことがあります。検査中に大きな音が出るタイプの機器もあります。
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超音波(エコー)検査
Ultrasonography
弱い超音波(人間には聞き取れない高い周波数の音)を体に当てて、臓器や組織にぶつかってできる反射波を画像化することによって診断する検査方法です。
人体に無害で、放射線の被ばくや、検査による痛みなどもほとんどないといわれています。
内臓、筋肉、脂肪などの組織の診断に優れ、がん検診では乳房、甲状腺、腹部、骨盤部などで広く使われています。
ただし、超音波は骨や空気を通りにくいので、脳や肺、胃、腸などの検査には、あまり適していません。
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内視鏡検査
細いチューブ状のカメラの先端を体内に入れ、直接内部を観察する方法です。
チューブの先端にはカメラや照明ライト、鉗子(ハサミ)などもついており、病変の観察だけでなく、検査用の組織を摘み取ったり、ポリープを切除したりするなど、簡単な処置を行うことができます。
初期の胃がんなど粘膜表面の異変は、画像診断では見つからないことが多いため、内視鏡は粘膜に生じたがんの早期発見に大変有効です。
内視鏡検査の詳しい解説ページ
生化学検査
血液・尿・便を採取し、その中に含まれる化学物質の量を測定することで、健康状態や病気の程度を調べる検査法です。
がん検査ではもちろん、幅広い疾患の発見に役立っています。
がん検診のスクリーニング検査においては「腫瘍マーカー検査」「内分泌検査」「マイクロRNA検査」などがあります。さらに一次検査で病変が見つかった場合は、精密検査として「病理診断(生検、細胞診)」があります。
生化学検査の詳しい解説ページ
ウイルス検査(ハイリスク検査)
がんの原因となるウイルスに感染しているかを調べる検査です。
ウイルスの存在の有無によって、即時がんの診断をするわけではありません。しかし、がんの罹患リスクを知り、診断の精度をあげることに役立ちます。
ハイリスク検査の対象となるウイルス
・ピロリ菌検査(胃がん)
・EBウイルス検査(胃がん・他)
・肝炎ウイルス検査(肝がん)
・HPV検査(子宮頸がん)
・HTLV-1検査(白血病・リンパ腫)
ウイルス検査(ハイリスク検査)の詳しい解説ページ
生物診断
疾患を持つ方の尿や呼気には独特の臭いがある、ということを応用し、嗅覚に優れた生物に選別させる検査方法を「生物診断」といいます。
まだまだ研究段階にあり、スクリーニング検査として今後の発展が期待されている分野ですが、一部実用化も始まっています。
生物診断の詳しい解説ページ
視診・触診・問診
患者さんの主訴(特に気になっていること)や自覚症状、病歴を聞き取り、体の形状の異変などを医師が見つけます。そうすることによって、画像診断や血液検査などで得られたデータがどのような体質に起因しているかなど、トータルで判断することができます。
視診・触診・問診の詳しい解説ページ
まとめ
以上、このページでは代表的ながん検査をご紹介しました。よく耳にする検査から、まだあまり知られていない検査まで幅広くありますが、それぞれの特性を理解して、上手に組み合わせることで、がんの早期発見と健康維持に役立てられるといいですね。
がん検査に健康保険を適用するには紹介状が必要になりますので、まずはかかりつけの医師にご相談ください。
※なお、今後の医療技術の進歩により、検査や機器の名称や情報が変更になる場合もございます。予めご了承ください。
がん検査 一覧
◆画像診断◇X線(レントゲン)
・胸部X線
・胃X線(バリウム検査)
・乳房X線(マンモグラフィ)
◇血管造影
◇シンチグラフィ
◇PET / PET-CT / PET-MRI / 乳房PET
◇CT
◇MRI / DWIBS(ドゥイブス)
◇超音波(エコー)
◆内視鏡
・胃カメラ / 大腸カメラ
・カプセル内視鏡 / 腹腔鏡・胸腔鏡
◆生化学検査
・腫瘍マーカー、血液検査
・マイクロRNA(miRNA)検査
・病理診断(生検、細胞診)
・便潜血検査 / 尿検査
◆ウイルス検査
・ピロリ菌 / EBウイルス
・肝炎ウイルス / HPV / HTLV-1
◆生物診断
・線虫がん検査
◆視診・触診・問診