一度の撮影で全身のがんをチェックできるというPET検査ですが、より精度の高い診断を得るためには、ほかの検査方法を併用することが有効です。
このページでは、PETとは異なる手法でがんを探す、内視鏡検査の対象部位や検査方法、メリット・デメリットについて解説します。
内視鏡検査(胃カメラ、大腸カメラ、腹腔鏡)Endoscope
対象部位:のど、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸など
細いチューブ状のカメラの先端を体内に入れ、直接内部を観察する方法です。
カメラの先端には、撮影用のレンズのほかに、照明ライト、鉗子(ハサミ)、薬剤塗布や送風のためのノズルなどもあって、撮影や観察だけでなく簡単な病変を治療することが可能です。
内視鏡検査のメリット
- モニター画面ではっきりと患部を見ることができる
直接患部を観察でき、医師と一緒に患者さん本人も、フルカラーのモニター画像でリアルタイムに消化器の内部を見ることができます。 - 気になる部位を様々な角度からじっくり観察できる
内視鏡の向きを変えることで、見たい場所を自由自在に映すことができます。 - 動画や静止画で記録できる
記録されたデータを保存して、過去の状態を確認、現在と比較することもできます。 - エコーなどの検査よりも精細な情報が得られる
直接患部を見るため、白黒のエコーよりも鮮明に粘膜表面を観察することができます。※ただしエコーは内部の深い部位の組織まで見ることができますが、内視鏡は粘膜の表面しか見ることができません。 - 検査薬を塗布して疑わしい組織を判別することができる
疑わしい部位は患部に直接検査薬を塗布して、組織を染色して見極めることができます。
<代表的な染色法と対象になるがん>
・コントラスト法・色素散布法…青い色素(インジゴカルミン)により胃粘膜の凹凸をより明瞭化
・酢酸散布法…酢酸を塗布すると、胃粘膜の非がん部は白く抜け、胃がん部分は赤くなる
・ルゴール染色法…正常細胞はヨウド液で茶色に染まるが、頭頚部がんや食道がんは変色しない
・トルイジンブルー…ただれて壊死した組織(食道がん、早期胃がん、胃潰瘍など)が青く染まる
・クリスタルバイオレット染色法…核まで染色できる検査液を塗布して1分間放置してから表面の溶液を洗い流すことで、大腸がんが蛍光紫に染まる - 消化器の形を変えてしっかり観察することができる
形状が紛らわしい部位やしわになって撮影しにくい部位は、体内に空気を送って、消化器を風船状にふくらませて、粘膜の表面を伸ばして観察・写真撮影することができるので、誤診が生じにくいです。 - その場で組織を採取して生体検査ができる
検査中に組織を直接採取して生体検査に回すことができるため二次検査の手間がかかりません。 - その場で切除手術も可能
小さな腫瘍なら検査時にそのまま切除手術が可能、早期発見・早期治療が一度でかないます - 技術の向上により、検査時の苦痛が軽減しつつある
近年は装置の性能が上がり、小型化が進んでより細くなり、チューブは弾力のある柔らかい素材になって、検査時の苦痛が軽減されています。また内部を洗浄する薬や、麻酔も進化して、検査全体にわたって、苦痛や肉体的負担が少なくなっています。
内視鏡検査のデメリット
- 粘膜表面しか観察できない
粘膜の内部にできた病変やがん(粘膜下腫瘍)は基本的に見つけることが難しいです。
組織に埋もれているがんの検出には、PETやエコー(超音波)の方が有効です。 - 人によっては苦痛を感じる場合も
麻酔をするとはいえ、鼻や口、あるいは肛門からカメラを挿入するうえ、チューブ状を体内で動かして操作するため、人によっては腹痛や苦しさなど苦痛を伴います。 - 消化器内をしっかりきれいにしておく必要がある
消化器内に未消化のものが残っていたりすると診断の妨げになるため、完全に空腹にしておく必要があります。消化しにくい食べ物は残ってしまい検査の妨げになることがあります。特に大腸カメラは腸内洗浄に時間がかかり検査開始が遅れたり、検査中止になったりする可能性もあるので注意が必要です。 - 検査費用がやや高額
レントゲンやエコーなどの検査に比べて検査費用が高く、保険適用であっても3割負担で約5,000~10,000円ほどになります。 - 検査時間が長く、予約がとりにくい
レントゲンやエコーに比べて準備や検査にかかる時間が長く、予約がとりにくい傾向にあります。
また検査そのものは30~60分ほどですが、検査前の準備、検査後の待機時間などがあるため、胃カメラなら2~3時間、大腸カメラなら、3~5時間を要することが多いです。
胃カメラ(上部内視鏡検査)
対象部位:のど、食道、胃、小腸の一部(十二指腸の上半分ほど)まで
検査前に絶食をして、胃の中を空っぽにしておきます。検査直前に鼻やのどに表面麻酔を施してからカメラを挿入し、医師が位置などを操作しながらモニター映像で観察します。
挿入するカメラは、経口の場合は直径1センチ、経鼻の場合は直径5ミリほどです。
胃カメラのメリット
- 近年はカメラが細くなり(5ミリ以下)、鼻から入れるタイプが一般的で、検査中に会話もできる
小型化が進み、年々不快感のない検査が可能になってきています。 - バリウム検査より精度が高く、表面の小さな病変も見つけることができる
レントゲンなどでは判別が難しい粘膜表面の異変を早く検出できます。 - 胃潰瘍や逆流性食道炎、ポリープなど、がん以外の病変も早期発見でき、その場で組織採取が可能
小さいポリープはその場で切除などの治療をし、同時に病理診断(精密検査)にまわすことができます。
胃カメラのデメリット
- 経口の場合は咽頭反射(嘔吐感)が出ることがある
- 鼻やのどに麻酔が必要で、麻酔にアレルギー反応が起きる場合がある
- 経鼻の場合は鼻粘膜が傷つき鼻血が出ることがある
- 胃全体像の把握は苦手で、胃の粘膜より奥は見ることができない
大腸カメラ(下部内視鏡検査)
対象部位:直腸、盲腸、結腸、大腸、肛門、小腸の最下部一部
検査前に半日以上絶食をしたうえ、大腸内を空にして洗浄してから、カメラを肛門から挿入します。腸洗浄には大量(2リットル)の洗浄液を飲む方法、大きめの錠剤を何度も飲む方法などがあります。
大腸カメラのメリット
- 検査しながら治療や組織採取ができる
胃カメラ同様に、小さいポリープはその場で切除治療が可能で、生体組織の採取をすることができます。 - 粘膜表面の小さな異変を見つけやすい
エコー検査よりも精度が高く、表面の小さな病変も見つけることができます。
大腸カメラのデメリット
- 検査前の腸洗浄がつらいという方も
「洗浄液を飲んで排便を繰りかえす」という行程がつらいという方が多いです。しかし近年は飲む量の少ない洗浄液や飲みやすい味の薬剤、錠剤の洗浄薬など使いやすいものが増えており、腸洗浄の苦痛が軽減されつつあります。 - 検査中に痛みを感じることも
個人差がありますが、大腸の形状によっては、検査時にチューブが腸内を動くたびに痛みを強く感じる場合があります。
カプセル内視鏡・バルーン内視鏡
対象部位:小腸全体(十二指腸、空腸、回腸)
小腸は細く、5~7メートルと長いため、これまで内視鏡だけで長時間観察することが困難でした。
しかしカプセル内視鏡なら小型カメラを飲み込むという新しいタイプの検査方法なので、長時間にわたる撮影でも苦痛や負担がありません。
まず、薬のカプセルよりも大きめのカプセル型のカメラ(長さ26mm、幅11mm)を飲み込みます。すると消化の動きによって、自然にカメラが胃から大腸まで進みながら1秒間に2~6枚、便で排出されるまで7~8時間かけて数万枚の画像を撮影し、腰に装着したレコーダーに記録していきます。
撮影された全データをコンピュータ上で合成・解析することで、動画として消化器内を観察することができます。
カプセル内視鏡のメリット
- 患者さんの負担が少ない
カプセルを飲み込んだ後は、排出されるまで特に痛みや違和感もなく、患者さんの負担が少ないです。 - 小腸全体を見ることができる
胃カメラでも大腸カメラでも届かない、小腸内部が見られるようになったのは大きな進化です。
カプセル内視鏡のデメリット
- 小腸以外は十分に見ることができない
小腸全体を観察できる一方、それ以外の消化器官(食道や胃、大腸)は十分に観察することはできません。 - カメラの遠隔操作ができないため、見たい場所を特定して映すことはできない
カプセルが体内を流されていくだけなので、チューブ状の内視鏡のように左右を見渡したり、奥に戻ってじっくり見る、などの観察ができません。しかも小腸にたまっている内容物にも影響されやすく、撮影時間もコントロールできないため、小腸の奥のほうを観察できない場合があります。 - 治療や組織採取ができない
現在は撮影しかできないため、チューブ状の内視鏡のようにその場で組織検査のため一部をとったり、治療したりすることはできません。
腹腔鏡・胸腔鏡
内視鏡の一種ですが、胃カメラ・大腸カメラが口や肛門からカメラを入れる内科処置であるのに対し、腹腔鏡・胸腔鏡は皮膚に切り込みを入れてカメラを挿入する外科処置になります。
腹腔鏡
対象部位:大腸、小腸、胃、子宮
腹腔鏡検査とは、全身麻酔をかけて、お腹の皮膚に5ミリ程度の穴を開け、そこから細長いカメラの先端を挿し込み、内部をモニターで観察したり、組織を採取したりする方法です。
診察と同時に切除などの治療を行うこともできます(腹腔鏡手術)。切開手術で組織を採取する方法と比較すれば、腹腔鏡手術は低侵襲な方法といえます。
胸腔鏡
対象部位:肺、食道、胃
胸腔鏡はわきの下など肋骨の周辺からカメラを入れる方法で、肺がん・食道がん・胃がんの生体検査と切除手術を兼ねて行なわれることが多いです。
がん検査 一覧
◆画像診断◇X線(レントゲン)
・胸部X線
・胃X線(バリウム検査)
・乳房X線(マンモグラフィ)
◇血管造影
◇シンチグラフィ
◇PET / PET-CT / PET-MRI / 乳房PET
◇CT
◇MRI / DWIBS(ドゥイブス)
◇超音波(エコー)
◆内視鏡
・胃カメラ / 大腸カメラ
・カプセル内視鏡 / 腹腔鏡・胸腔鏡
◆生化学検査
・腫瘍マーカー、血液検査
・マイクロRNA(miRNA)検査
・病理診断(生検、細胞診)
・便潜血検査 / 尿検査
◆ウイルス検査
・ピロリ菌 / EBウイルス
・肝炎ウイルス / HPV / HTLV-1
◆生物診断
・線虫がん検査
◆視診・触診・問診