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その他のがん検査 - ウイルス検査(がん検査と基礎知識)

一度の撮影で全身のがんをチェックできるというPET検査ですが、より精度の高い診断を得るためには、ほかの検査方法を併用することが有効です。このページでは、PETとは異なる手法でがんを探す、 ウイルス検査(ハイリスク検査)の対象部位や検査方法、メリット・デメリットについて解説します。

もくじ

ウイルス検査(ハイリスク検査)
 ・ピロリ菌検査(胃がん)
 ・EBウイルス検査(胃がん)
 ・肝炎ウイルス検査(肝がん)
 ・HPV検査(子宮頸がん)
 ・HTLV-1検査(白血病、リンパ腫)

ウイルス検査(ハイリスク検査)Virus test

ウイルス検査

がんを引き起こすリスクが高いウイルスに感染しているかどうかを調べる検査です。 ウイルスの存在によって直接がんの診断をするわけではありませんが、がんの罹患リスクを知り、診断の精度をあげることに役立ちます。

ピロリ菌検査(胃がんハイリスク検査 / ABC検診)

対象部位:胃、食道

ピロリ菌イメージ

ピロリ菌は「ヘリコバクター・ピロリ菌」「ヘリコバクテル・ピロリ(HP)」などともよばれます。
感染すると胃炎を引き起こし、除菌しない限り慢性的に胃の炎症が続くとされ(持続感染)、やがて胃の粘膜が薄くやせて萎縮が進み、胃炎が悪化することで胃潰瘍や胃がんを引き起こすといわれています。

ピロリ菌による胃がんリスク

日本では、胃がんに罹患する方の99%はピロリ菌がいるとされます。
また、ピロリ菌に感染すると10年間で3%程度の方が胃がんになり、ピロリ菌がいない方の発症は0%とされています。
このことからわかるように、胃の炎症は必ずしもピロリ菌だけで起こるわけでなく、ストレスや食生活などの環境因子も影響していると考えられています。ピロリ菌に感染しても胃がんにまで進行するのはごく一部の方です。
ピロリ菌はあくまでリスクの一つではありますが、胃がんかどうかの診断には役立ちます。

ピロリ菌の検査方法

ピロリ菌の検査方法はおおまかに3つあります。

・内視鏡(胃カメラ)で胃の組織を採取して調べる方法
・呼気(吐いた息)を採取してその中に含まれている二酸化炭素を調べる方法
・血液や尿で抗体を検出する方法

また「ピロリ菌抗体陽性」と診断されても、必ずしも感染しているとは断言できないため、さらに精密検査(内視鏡検査、または尿素呼気試験法、抗体測定、糞便中抗原測定など)を行ったうえで診断します。
感染が判明したら除去治療を受けます。
ピロリ菌を除去した方は、しなかった方と比較すると、新規の胃がんができる確率が3分の1まで下がるとのデータも出ています。

ピロリ菌の除去治療

健康保険が適用され「1次除菌」「2次除菌」と段階にわけて除菌薬を服用し、駆除されたかを確認します。 なおピロリ菌感染の原因は、乳幼児期に大人から感染するケースが多いとされ、近年は感染者の割合は減少しています。

EB(エプスタインバー)ウイルス検査

対象部位:のど、リンパ、胃、食道

胃がん、悪性リンパ腫、鼻咽頭がんを発生しやすくさせると考えられています。
唾液に潜み、人から人へ感染するウイルスで、多くの人が感染して自然治癒を経験します。しかしながら近年、胃がんのうちEB ウイルスに原因するもの(EBV関連胃がん)が10%を占めることがわかってきました。
そのため今後の胃がん診断にも、EB ウイルス検査が活用されていくと考えられています。

肝炎ウイルス検査

対象部位:肝臓、胆のう

肝炎ウイルスイメージ

肝がんの患者さんは、過去にウイルス性肝炎を経験した方が9割を占めているとされます。
そのため、肝炎ウイルスを調べることで、ご自身が肝炎ウイルスに罹患したことがあるか確認し、肝がんのリスクを正しく把握することができます。

HBs抗原定性

B型肝炎ウイルス(HBV)の外殻です。
現在HBVに感染していることを示しますが、必ずしも症状があるわけではなく、無症候性キャリアの方も含まれます。

HCV抗体

C型肝炎ウイルスに感染した際にできる抗体です。陽性の場合は、現在、または過去に感染していることを示します。陽性であれば、現在感染中かどうかを判定する検査を受けます。

ウイルス性肝炎の治療

なお、肝炎ウイルスに感染し、肝臓の細胞が少しずつ壊れていく症状をウイルス性肝炎といい、将来的に肝硬変や肝がんを引き起こす可能性が高いとされています。しかし近年は治療薬の開発が進み、副作用の少ない方法でウイルス性肝炎を治療できるようになってきました。

HPV(ヒトパピローマウイルス)検査

対象部位:子宮頸部

HPVイメージ

子宮頸がんの原因となるウイルスです。ほかにも肛門がん、膣がんの原因にもなるとされています。
HPVそのものは広く分布し、多くの人が罹患するとされるウイルスで、性交渉経験がある約80%の女性が50歳までに一度は感染するといわれています。しかしほとんどの場合は自己免疫により消失してしまいます。
けれども消失されることなく感染の状態が続けば、子宮頸部の組織が「前がん病変」という状態になります。この病変が早期に回復すれば「軽度異形成(CIN 1)」という状態で済みますが、その後「中等度(CIN 2)」「高度(CIN 3)」と病変が悪化していくと、がん細胞に進行し子宮頸がんを発症します。
HPVに感染すると、約10%が持続感染となり、感染から平均5~10年ほどで前がん病変に変わるとされています。そして前がん病変のうち25%以下が、さらにがん細胞に進行するとされています。ウイルス感染からがんに進行するのはごく一部であり、ほとんどの場合は消失するため過度に恐れる必要はありませんが、きちんと検査は受けるようにしましょう。

子宮頸がんの予防接種

現在、子宮頸がんを防ぐとされているのが、HPV感染を予防するための「HPVワクチン」です。
感染前に接種する必要があり、10代の女性を対象に定期接種が行われています。HPV感染後に接種しても効果は得られないとされています。

HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス-I型)検査

対象部位:血液、リンパ

HPVイメージ

HTLV-1(Human T-cell Leukemia Virus Type 1)は成人T細胞白血病やリンパ腫を引き起こすと考えられているウイルスです。
HTLV-1は白血球の一種であるリンパ球に感染します。
一度感染すると無症状のまま感染し続け、そのうちの数パーセントの方に血液や神経の病気が起こりますが、それ以外の90%以上の方は病気を発症することはないとされています。